
当スタジオではローラーセッションの指導をする際にパワーデータをベースに指導することが多いで、会員様には一人一人Training Peaksを作成させていただきデータを集めたりしています。
その際に、既にパワートレーニングをしている方の場合、一番最初のカウンセリング時にフィットネスデータ( まずはPower Profile / PP )を解析しています。すると“5min/20minで発揮できるパワーは高いけど、5sec/1minで発揮できるパワーは低い”という方が非常に多いです(指導経験上“最低”8割ぐらいはこういう方が多いです)。※以下の画像のようなタイプです。
→左から5sec/1min/5min/20min/60minの最大出力( Mean Maximal Power / MMP )を表しています。
こうしたPPは、トレーニングを始めたてのサイクリストだけでなく数多くのヒルクライマーやトライアスリートに多い傾向にあります。“なぜこういうPPになるのか?”とも聞かれるので、過去の運動強度と積算時間を表したTime In Powerzone ( TIP ) も合わせて見てみます。
→左からL1、L2 …. L5、L6というゾーンになります(簡単にいうと、L1が低い強度、L6が高強度になります)。
これを見てみると、L6(高強度)の割合が非常に低いことがわかります。”じゃあ、5sec/1minを伸ばすためにはTIPの割合を大きく増やせばいいのか!”と思う方が多いかもしれませんが、実はそれだけでは伸びないことも多いのが現実です。
今回、こうしたプロフィールに近い方が、とある方法で改善されたケースがあるので、それを元に紹介したいと思います。
兼松大和選手の努力
昨年の乗鞍前のお話ですが、兼松大和選手のトレーニングをサポートさせていただいておりました。
実は、ヒルクライムで有名な兼松選手のPPも、先ほど説明したような状態でした。具体的な数値を出してしまうと色々とありそうなので、帯グラフで説明させていただきます。
まず2018年と2019年のPPを見比べてみたいと思います。
見比べていただきたいのは赤い矢印のついた1minのデータです。去年のデータに比べて、オフシーズンのトレーニングを頑張ったことで11.2%も向上しています(とんでもなく頑張った証拠です)。
それではTIPがどうなっていたのかを確認したいと思います。
昨年に比べて0.52%(L6以上)の向上ではありますが、決して大きな向上ではありません(時間にして30分ほど増えたぐらいで、オフシーズン中も似たような割合です)。ここから考えられることを言えば“L6の割合を伸ばしたからといって、L6が飛躍的に向上するとは限らない”ということです。
では、実際何をしていたのかといいますと…
疲労を無視して乗ってるけど…
そして…
疲労を無視してジムに来たけど…
疲労は正直でして…
走ってるとL4辺りから異常にキツイし、意外に重量上がっても継続する気が起こらないし、自転車もジムも直ぐに足パンになる。
そして、何よりも筋肉が痛いのだ。
でも、人体実験は続けるのだ! pic.twitter.com/CvRIFpD8fj
— 野菜栽培おじさん Kanematsu_Yamato 兼松大和 (@Changingman_TGR) April 3, 2019
そう”筋トレ”をしていました。
※筋肉は全てを解決する
実は1minや5secを伸ばすためにはTIPの割合を増やしたり、MMPに挑むインターバルなどを実施する他にも”筋トレ”も必要になってきます。ということで昨年オフシーズンに入るタイミング(2018年11月末頃)で、兼松選手にストレングストレーニングの指導をさせていただいてました。
それ以降、ウェブでフォームをチェックさせていただいたり、トレーニングのアドバイスをさせていただいておりましたが、半年ほどでここまで伸びてきました。とても素晴らしい努力の賜物です!
自転車に乗り込む、自転車乗って強度を上げる、というだけでは解決されないことも多くあります。兼松選手はそれを理解して取り組んだ結果、自身の弱点であった1minのMMPを向上させることができました。
もし、自身のフィットネスに限界を感じたら、是非ともやってみましょう。
1minを伸ばす意味とは…
1minを伸ばしてもヒルクライムやタイムトライアルの能力に関係ないんじゃないの?と思われるかもしれませんが、実はヒルクライムやタイムトライアル能力を伸ばす上でも重要になります。というのも、指導をしていて1minが伸びると5minや20minなどの能力も向上する傾向にあるため、そこが伸びるということは潜在的な有酸素能力のパフォーマンス向上に繋がるということです。
レースやイベント会場などでお話しする方の中で、たまに相談されるのですが”坂ばかり登ってればいいや””平坦でTTバイク乗ってればいいや”という考えの方に多く遭遇します。「んーこういう人は何言っても変わらないから何も言わないでおこう」という冷たい面も持ち合わせている僕ですが、このブログを読んで何か心に響いたパフォーマンスが頭打ちになっている方は、兼松選手のように今まで自身が試していたこととは違う方法を、勇気を出して試してみることをお勧めします。