
“次はスクワットを100kgまで挙げよう”
時々、パフォーマンス向上のために、ウエイトトレーニングに数値設定をしながら取り組む競技系アスリートがいます。それを見かける時にふと思うことがあります。
“そのスクワット100kgという数値が本当に達成したいものだろうか”と。
その数値が自身の競技力向上につながるかということもそうですが、達成したい目的がいつの間にかトレーニングでの数値になっていませんか?ということを、改めて考えて欲しいなと思うことがあります。
というのも、この記事を書いている自身が時々陥ることもあるからです。そのうように陥る理由としてはなかなか向上しないパフォーマンスに対する現実逃避的なこともあるかもしれませんが
・目的達成までのロードマップが明確化されていないこと
・定点観測としてPDCAのC(Check)がおそろかになっていること
が考えられます。
みなさんは手段が目的になっていませんか?
今回はそうなっていませんかという自身を振り返るためのきっかけと、そうならないようにするための考え方(視点の持ち方)について書かせていただきました。
目的を達成するための”手段”の理解
例えば、年代別のマラソン大会で入賞するために3時間切りを達成したいと考えたとしましょう。
その場合、本当に達成可能かを含めた現状を知るためにも、まずはマラソンのパフォーマンスに関する因子を知る必要があると考えられます。実際にその因子を紐解いた時に、代表的なものとして
・持続可能なトップスピード
・ランニングエコノミー (フォーム)
・有酸素性代謝の機能向上 (運動生理学)
が挙げられるでしょう。※短期的因子としてペース(コース)戦略・栄養戦略などは一旦パスします。
上記の因子を中心に、目的に必要とされる能力と現状の自身の能力を比較し、スピードが足りないと自覚している場合、今度はスピードに関する因子を細分化していきます。例えば、スピードを決定づけるものとして
・ピッチ (動作速度 : 神経系)
・ストライド (可動域 : モビリティ)
・パワー (床半力)
が挙げられるでしょう。※外的因子(シューズの種類)なども考えられますが、一旦パスします。
上記の因子の中で、自身に何が足らないか解析した結果、”現状からピッチを上げるのは難しい為、ストライドを広げて速度を向上させる必要がある“という問題だっとします。しかし、現状の股関節の可動域が乏しいため、ストライドを広げようとすると、骨盤の回旋が大きく入ってしまい足の着く位置が変わってスピードが乗り切らないことに合わせ床半力がもらいにくくスピードが出ないという状態になってしまうことが判明したとしましょう。
この場合、フィットネスが足りていない状態では新たなるスキルの習得が難しいため、改善するために、
・股関節の柔軟性+筋力を向上させてストライドを広げる
・大きな床半力を吸収しても怪我をしない筋肉-腱を手に入れる
必要があると考えられます。
それを解決するための効率的かつ効果的な”手段がウエイトトレーニング“だと考えられたため、トレーニングの一環に取り入れることにしました。
ここまでの一連の流れを目にしていただいて、ウエイトトレーニングが目的ではなく、目的を達成するための解決策としてウエイトトレーニングを手段として選択している思考をご理解いただけたでしょうか。
上記では、あくまでもパフォーマンス向上を阻害する因子を解決するための手段として取り入れています。
手段が目的化される理由
本来、トレーニングとはこうした目的達成の一連の考えたさいに、足りないものを補うために取り組むものであると考えられます。その際、多くの方が、パフォーマンスを改善・向上するための手段としてウエイトトレーニングを選択されることが多いのですが、なぜか目的になる傾向にあります。
その理由として、挙上重量を中心としたいくつかの指標が数値化され、トレーニングとして非常に取り組みやすい手段であるため、重量や回数などを”達成しないといけないという目的”へと置換されやすい傾向にあるのではないかと考えられます。
こうならないためにも、本記事の冒頭にも書いたように日頃から”なぜこのトレーニングを行なっているのか“という『WHY』を考えながら行い、定期的にトレーニング内容を全体的に確認する必要があると考えています。
当施設はストレングス&コンディショニングを指導していますが、それはあくまでも(目的目標もよりますが)”競技力向上につながる因子に対するアプローチ”や”怪我をしないためのカラダ作り”のためです。目的目標につながるための手段を分析し、必要となるであろう能力を得るために指導しています。
なかなか目的を達成できない
そう感じた時、もう一度自身が行っているトレーニングが
・目的化されていないか
・的確な手段として取り組めているか
を、上記を参考に考えてみましょう。
何か悩まれているかたは、参考にしていただけると幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
余談
上記の記事を読むと、ウエイトトレーニングで重量を上げることを目的としてはいけないのか?と考える人もいるかもしれませんが、挙上重量を目的としてセットしても良い場合もあると考えられます。
- パワーリフティングやウエイトリフティングなど、そもそも挙上重量を競い合うこと目的としたスポーツを行っている場合。
- 競技力向上のためにプライオメトリクスを取り入れたい場合に、基礎基本となる筋力が足りていないと考えられたため、安全にプライオメトリクスを行うための基礎筋力を手に入れるための指標としてスクワットの挙上重量を設定している。
などです。と、書いておきながら2も微妙だなと思うので、基本的には1が目的化しても良い正当な理由かなと考えています。