オルカトレーニングラボ

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PERSONAL SESSION

【お客様との会話】登り坂の膝の痛みの原因は?

2021.10.7

最近パーソナルトレーニングを受講していただいた方に”膝の痛みが気になるんだけれど、どうしてだろうか?“というご質問されました。

 

ご質問いただいた方と同じように、こうした膝の痛みが原因で

長く走れない
速く走れない

という人は多く、競技的なサイクリストでも6割ほどの方が悩まされるケースもあるのだとか(1)。※腰の痛みも結構ありますよね

 

こんな私もロードバイクに関する指導に携わって6年以上が経過ましたが、個人が行っている

パーソナルトレーニング
グループトレーニング
パワートレーニング
フィッティング

を通して200名近くのサイクリストを、各種スクールを含めると1000名近くのサイクリストを指導させていただきました。確かに、その中でも体の痛みを訴える方で膝が痛いと相談される事が多数ありました。

 

こうした膝の痛みですが、私が指導してきた経験上、原因となる理由が大きく3つあると考えております。

 

【膝が痛くなる原因】
① ポジションがあっていない
② クリートの向きが適切でない
③ 股関節でなく股関節がメインになっている
※ もちろんこの3つ以外にも複数原因はあります。

それぞれの原因に対する簡易的な内容を述べさせていただきたいと思います。

 

① ポジションがあっていない

ロードバイク初心者から初級者の方によく見られる傾向で、ポジションが合っていないことが原因で膝が痛くなるというケースがあります。

 

そもそも、ポジションがあっていないというのはどういうことかと疑問に持たれる方もいると思います。各自の骨格および筋力・柔軟性により、ペダルを漕ぐ際に最適な姿勢・動作があると考えているのですが、こちらの記事ではその最適な姿勢・動作が行えてない状態のセッティングを、ポジションがあっていないと定義させていただきます。

 

では、そのような状態になる原因の多くは何にあるかと言いますと、サドルの高さに見られます。サドル位置が低いことが原因で、膝を痛めるケースをよく見かけます。

 

何故、サドルが低いと膝が痛くなるのか?と疑問に思うわれる方も多いと思いますが、スクワットという動作を例に考えてみましょう。

 

スクワットで浅く屈むと太ももの前側は疲れにくいですが、深く屈むと太ももの前側が疲れてくるようになります。※わからない方は、実際にスクワットの屈む深さを変えて30回ずつやってみましょう。

 

極端ですが”サドルが低い=スクワットで深く屈む”という感覚に近くなり、膝の曲がる角度が大きくなります。そのため、膝を伸ばそうとする作用が高まり、乗り続けることで太ももの前側を酷使され膝が痛くなるという状態に陥り、膝が痛くなるわけです。

 

では、初心者から初級者の方にはどれぐらいのサドルの高さが良いのか?と疑問に思われる方も多いと思いますが、その高さは人によって違いますのでこれが良いよ、と100%の回答を出すことができません。ただ、簡単な合わせ方として、まずはサドルに乗った状態でペダルの車軸にカカトを合わせたときに、膝が伸びきる状態の高さにしておく、という方法もあるよと一例だけここに記しておきます。

 

さて、ここまで書いておきましたが、原因はサドルの高さや前後調整だけでなくハンドルの高さであるケースもあります。実は、膝が痛い=下半身が原因というわけではないケースも複数ありますので、本当に悩んだときは専門家に見てもらった方がいいと思いますので、先ほど上げた例で解決できない場合はお近くの自転車店などでフィッティングを受講することをお勧めします。

 

② クリートの向きが適切でない

①ポジションがあっていないから派生する項目になりますが、ロードバイク初心者から中級者の方によく見られる傾向で、クリートの向きが適切でないことが原因で、膝が痛くなるというケースがあります。

 

クリートの前後位置を気にされる方も多いのですが、クリートの角度(向き)を気にされる方はあまりいません。ここで、興味がある方は自身のシューズに取り付けられているクリートが、どこを向いているか確認してみましょう。

 

A : 内側(親指側)に傾いている
B : 真っ直ぐ(中指側)に向いている
C : 外側(小指側)に傾いている

 

私自身が今までフィッティングさせていただいたケースを見ると

A : 3割
B : 5割
C : 2割

という傾向にあると感じられました。

 

実は、この中で膝を痛めやすいケースがAになります。Aは膝を痛めやすいKnee in – Toe out (膝内側 – 爪先外側)という状態になりやすく、特に扁平足の方がそうした状態になっているのを見かけます。

 

この場合、クリート位置をBに戻すという手もあるのですが、Bに戻してもknee in – Toe out が継続されるケースがあります。その場合は、扁平足を緩和させるための矯正機能のあるインソールを取り入れた状態でBにしたり、原因は足趾だったり股関節周りの筋群の低下による影響もあるので、簡易的な運動をすることも重要になると考えられます。

 

この辺りはカラダの状態を見ていないと判断しにくいので、①のように一例を紹介することができませんが、もし当てはまることがあればお近くの自転車店や運動従事関係の方にインソールや機能改善の相談をすることをお勧めいたします。

 

③ 股関節でなく膝関節がメインになっている

上記にも述べたような①と②に問題がない場合でも、膝が痛くなるケースがあります。それは股関節でなく膝関節がメインの動きになっている場合で、これは中級者から上級者に起こり得えます。

 

基本的に、ペダルを漕ぐ動作は股関節-膝関節-足関節と3つの関節をうまく連動させて行うのですが、股関節の筋群に対する神経伝達がうまく行えていない場合、膝関節が優位な状態でペダルを漕ぎ続け、その結果膝を酷使して痛くなるというケースがあります。

 

では、そのようなペダリングの動作特徴は何かと言われた場合、各個人の身体的特徴や動きの癖があるので専門知識と指導経験があってもわかりにくい部分があるため、言語化して伝えることが非常に難しいなぁとこの記事を書いていて思います。

 

ただ、原因を探るためには自転車から降りた状態でフィジカルアセスメント(身体評価)を行い、股関節伸展筋群の筋力が十分にあるか、適切に稼働させることができるのかという評価方法があります。こちらを行うためには、それこそ身体的な専門知識がないと判断は難しいので、運動指導の専門家に相談してみましょう。
※お近くであれば当施設のパーソナルトレーニングを受講してみてくださいね。

 

痛みを長引かせない

カラダに痛みや違和感が出ると、楽しいはずのサイクリングも楽しくなくなりますよね。その痛みを引きずったまま走り続けると、慢性化して取り返しがつかないケースもあります。

 

私自身の指導体験でいえば、膝の痛みや違和感の改善を求めていた女性サイクリストのフィッティングをされていただいた際に、痛みを堪えて動き続けていた結果、変形性膝関節症になってしまったという方もおりました。

 

今回は軽度の膝の痛みをお持ちになっている方を対象としたイメージの中で書いた記事ですが、長期間痛みが発生する場合や自転車から降りても膝の痛みがある場合は、必ずお近くの医療機関を受診しましょう。

 

痛い時は乗らない。

痛みがおさまっても、根本を解決しないとまた痛くなる。

 

この繰り返しが続くと、サイクリングが楽しくなくなりますし、日常生活にも支障が出てしまいます。臭いものには蓋をせず、しっかりと対処して繰り返さないようにしましょう。

 

そのためにも、最低限の知識を持った上でサイクルスポーツを楽しんでいただけたらなと思います。何かあれば、是非ご相談ください。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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参考資料

(1)Silberman, Marc R. MD (2013) : Bicycling Injuries , Curry Sports Med Rep .Sep-Oct 2013;12(5)